『天才柳沢教授の生活』 (2002.10 水曜 フジ21:00〜21:54)

ホームドラマの老舗のTBSでは『おとうさん』で、田村正和が頑固なそば屋の店主で4人の娘の父親を演じ、それに対抗してかフジでは、この『天才柳沢教授の生活』で松本幸四郎が、とぼけた父親役で出演している。 今や中年以上の年齢で主役を張れる役者と言ったら、この2人くらいじゃないかな。 原作は14年間連載されている青年誌の漫画だそうだけど、漫画を殆ど読まないぼくは一度も読んだことが無いどころか、その存在さえ知らなかった。 勉強熱心で、一つの疑問にはとことん掘り下げて考える性格は、演出上、大袈裟なデフォルメがなされているけど、あの気持ちはちょっと理解できる。 童謡の『七つの子』に出てくる「七つ」は七歳なのか七羽なのかに真剣に悩んだり、童謡『一週間』の歌詞にもツッコミを入れている姿は笑える。 しかし松本幸四郎という役者は、たくさんの引き出しを持っていて凄いと思うね。 本業の歌舞伎は見たことが無いけど、『王様のレストラン』の時の「伝説のギャルソン」を毅然と、ときにコミカルに演じていたし、1000回を超える主演を果たした舞台『ラ・マンチャの男』は、力強い男のバイタリティーある演技だった。 ぼくは彼がまだ「市川染五郎」を名のっていた時代に見に行ったことがある。 今回の柳沢教授のキャラクターは、几帳面で融通の利かないマイペースな性格を、ゆっくりとしたしゃべり方や直線的な歩き方で、律儀さを表現していて面白い。 ただ、大きなテーマがあるわけでもないので、どんな着地点を目指してストーリーが展開していくのか、全く想像もつかないドラマだ。

柳沢良則