■アイドル脱却■  斉藤由貴

アイドル時代の絶頂の頃の彼女を知っていたら、今回の弾けた演技は、彼女のイメージを大きく覆したものだとビックリしてるだろうな。 ぼくが斉藤由貴を初めて知ったのは、確かカップヌードルかなんかのCMだったと思う。 物憂げにカメラに向けた視線が、”初恋”を連想させて「ドキッ」としたものだった。 美少女イラストで有名な”おおた慶文”さんの、当時の作品の少女はみんな、どこか斉藤由貴に似ていたくらい、アイドルの代表選手だった。 そして一つ目の転換期だったのが、『スケバン刑事』初代麻宮サキ役は、それまでの路線から大きく変わった配役だったが、見事に代表作となった。 そして同じ教義(モルモン教?)の人と結婚した時も、イメージは覆された。 いろんな顔を持っている人だ。 三谷幸喜の舞台『君となら』で、自分の祖父くらい歳の離れた男性と結婚することになり、彼(佐藤慶)を家族に紹介することで起こるドタバタ劇で、コメディエンヌとしての才能が開花した気がする。 でも今回の『吾輩は主婦である』ほどの弾けた彼女を見たのは初めてで、今までの彼女のイメージを良い意味でもぶち壊している。 『木更津キャッツアイ』で薬師丸ひろ子を、『ぼくの魔法使い』で井川遥を、『マンハッタン・ラブストーリー』で小泉今日子を破壊させたクドカン。 斉藤由貴も壊れた演技で、新境地開拓だね。 
2006.7.01

■郵便屋さんミッチー■  及川光博

一番最初に受けた彼のイメージは、申し訳ないけれど”一発屋”のような印象だった。 ローリー寺西とかコタニキンヤとか、特異なキャラクターで登場してきては、短期間で消えていった数々のタレントのような位置づけだと思っていた。 「王子さまキャラ」は今も健在のようだけど、ちょっと歳をとってきて「どこまで王子でやるんだろう?」と思ってしまう。 でも、『マンハッタン・ラブストーリー』の時の、夜の橋の下で、車のヘッドライトの中踊るプロポーズ・ダンスといい、今回の主題歌の時のダンスといい、動きに切れがあって身が軽く恰好が良い。 俳優としても、クドカン・ドラマのようなコミカルなものから、『氷の世界』の松嶋菜々子の元婚約者役のようなシリアスなものまで、器用にこなせるからこそ、今まで生き残ってこられたのかも知れない。 そういう意味では、ユースケ・サンタマリアのスタンスに近いものがある。 今回の『吾輩は主婦である』では、夏目漱石が乗り移ってしまった妻(斉藤由貴)や、脳天気な母(竹下景子)、隣のお騒がせ女(池津祥子)など、女の人に振り回される、善良なマイホーム・パパを演じている。 
2006.7.01